りんご畑の納屋に眠っていた150枚の絵。その絵が一人の女によって見出されたとき、時を超えて物語は動きだす――。実在の画家をモデルとした感動の長編小説。父が経営する銀座の画廊が閉店し、そこで働いていた香魚子は自分の行く末や恋人との未来に不安を抱えるなか、ある画集を手にする。それは知られざる画家・上羽硯(ケン)の絵だった。その絵に衝撃を受け、津軽の地に飛んだ彼女を迎えたのは、ケンを慕う絵描き仲間の女性・フク。ケンの個展を開催するため奔走する香魚子であったが、ケンとフクの二人には、戦前からの“秘められた過去”があった――。