ヘリコプターマネーとは、ヘリコプターから市中に現金をばらまくかの如く、国民に直接カネを渡すことで、マネーサプライを大幅に増やす景気対策。バーナンキ前FRB議長は、ヘリコプターマネーの強い賛成論者として知られている。ゼロ金利下の日本では、資金需要が増大しないために貸し出しが増大しない。それゆえに信用創造がなされず、マネーストックの増大はほとんどなかった。この現象を流動性の罠と区別するために、「信用創造の罠」と呼べば、そもそも市中のマネーが増えていないのだから、これは教科書的な流動性の罠とは異なった現象である。それでは信用創造の罠に陥った時に、通常の金融政策はマネーストックを増大させられるだろうか。ヘリコプターマネーは直接国民にマネーを配布する金融政策の最後の手段として注目が集まっている。ヘリコプターマネーの考え方は戦前からあり、フリードマン、バーナンキと進化してきた理論だ。だが、日本の現状と合わせた解説は未だに成されていない。本書は、気鋭のマクロ経済学者による端的な解説書。単に金融政策の解説にとどまらず、AIとの競争(労働面)という側面から日本経済を分析してきた経験を元に、ベーシックインカム(最低限の生活費給付)とセットでのヘリコプターマネー導入という具体的な導入方法も提示する。