武士に生まれながら、明治維新後、「ランプ」の普及をいち早く読み、石油卸業を開業して大成功を収めた大浦新太郎。日本での成功に飽き足らなかった新太郎は、早々と海外に目を向け、外国商社に頼らず単身外国で陶器を売り込むなど、たくましい商魂を発揮していた。そんな新太郎が生涯をかけた大事業として取り組んだのが、日本の伝統的なエンターテインメント、軽業芸を世界に広めることだった。度重なる不運や裏切りで、一文無しになる新太郎。だが、新太郎はあきらめなかった。一座の芸を育て、わずかな可能性にかけて渡航を重ね、ついに欧米で大成功を収めるのである。海外での成功の次は、日本のエンターテインメントの育成に力を注ぐ。まだ20代前半だった松竹創業者に協力するなど、日本近代芸能を陰で支えたのであった。今や世界に誇る一大産業に育った日本のエンターテインメント。その基礎を築いた男の波乱万丈の物語である。