「藍千堂菓子噺」シリーズ第5作!物語を彩るのは藍千堂謹製、初夏の上菓子三品。さちの友だち、おとみが母親に捨てられた!? 境遇が移り変わっていく幼い少女たち。さちが遊びに行ったおとみの家で、おとみの母親が百瀬屋の上菓子を出してくれた。おとみは、上菓子を生まれて初めて食べた様子。さちは「藍千堂の方が美味しい」と感じるが、「でも、どうして上菓子を出してくれたのだろう」。さちが微かな違和感じた次の日、おとみの母はいなくなった。おとみの母は、おとみを残して町火消の組頭に嫁入りした。嫁ぎ先が生さぬ仲の娘を嫌ったため、おとみは置き去りにされたのだ。大工の伯父夫婦が養女として引き取ることで、すでに話は済んでいた。大工は金を握らされ、おとみを引き取ったと噂されている。頑固で口下手な叔父に馴染めず、またその叔父から「おさちとは、あまり仲良くするな」と諭され、不安になるおとみ。そんな時、事件がおこり、おとみは「藍千堂」へ逃げ込んできて――。おとみの騒動をきっかけに、ふと自分の境遇に思いをはせるさち。なぜ、自分の年齢がひとつ減ったのか? 急に、「とと様」が自分の父になった訳は?さちも少しずつ大人になっていく――。