「藍千堂菓子噺」シリーズ第2作!季節のお菓子でにぎわい、日々、評判が高まる藍千堂。店を切り盛りする〈菓子莫迦〉で職人気質の兄・晴太郎にもいよいよ春が? と思いきや、惚れた相手の元夫は、奉行所を牛耳る大悪党だった! 前途多難な恋の行方に不穏な影が忍び寄る。江戸・神田の小さな菓子屋を舞台に、おっとりした菓子職人の兄、商才に長けた弟が菓子屋を切り盛りする「藍千堂」シリーズ。今作は、人日(じんじつ)、上巳(じょうし)、端午(たんご)、七夕(しちせき)、重陽(ちょうよう)といった五節句を題材に、季節の和菓子が登場する。実はこの兄弟、江戸で名店と謳われる「百瀬屋」先代の息子たち。父母亡きあと、叔父の清右衛門に訳も分からず店から追い出されたのだ。兄弟は、亡き父の教えと「甘いもん」を前にした時の客の「いい顔」を励みに、職人の茂市と三人で店の評判を上げていく。そんなある日、仕事一筋の兄・晴太郎が恋をした。ところが、晴太郎が惚れた相手の元夫は、奉行所を牛耳る大悪党。前途多難な恋の行方に不穏な影が忍び寄る。弟の幸次郎や、職人の茂市ら、周囲の人々に助けられながら、晴太郎は一世一代の大勝負に出る。著者が考案したオリジナルの和菓子も魅力的。第5話に登場する子戴(こいただき)は、宮中の祝儀に使われたのが始まり。赤いもち米で作った餅を平たくしてくぼみをつくり、小豆餡を載せるものだが、藍千堂オリジナルはもっと涼やかだ。『あんこの本』の著者、姜尚美さんの解説も読みどころのひとつです。※この電子書籍は2016年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。