誰にも知られず、15年。大富豪が心に秘めた究極の愛。
1年半前に、子爵だった夫と息子を不慮の事故で亡くしたビクトリア。ある日、爵位を継いだ義理の弟からディナーに招待され、彼女はかつて自分が家族と幸せに暮らした子爵の館を訪れた。そこで現子爵夫人が跡継ぎを懐妊したことを知り、心からの祝福の気持ちと、胸が張り裂けそうなほどの喪失感が交錯した。複雑な胸中から思わず中座した彼女を追いかけてきたのは、15年来の友人で大富豪のフィンだった。彼に励まされるうち、やがて一線を越えてしまうが、ビクトリアの心はいまだ亡き夫への想いに揺れていた。そのとき、おなかの中に小さな命がめばえたことなど知る由もなく……。
■幸せであるほど、それを失ったときの悲しみは深いもの。愛する家族を失い、自分だけ幸せになってはいけない――そんな思いがビクトリアの新たな恋に踏み出す勇気をはばむ、切なくも美しい物語をお贈りします。『子爵がくれたガラスの靴』(I-2747)の関連作。