男は何故、61年も服役しなければならなかったのか。更生と刑罰をめぐる、密着ドキュメンタリー。令和元年秋、1人の無期懲役囚が熊本刑務所から仮釈放された。「日本最長」61年間の服役期間を経て出所したのは、80代のやせ細った男。出所後も刑務所での振る舞いが体に染みつき、離れないでいた。男はかつてどんな罪を犯し、その罪にどう向き合ってきたのか?一地方放送局の記者2人とディレクター1人の取材班は、男に密着取材を行った。更生の物語を期待し、取材を進めるものの、一向に態度が変わらない男。それでも彼らは、この謎めいた男がなぜ服役し、どう罪と向き合ったのか伝えることをあきらめなかった。取材班が一丸となって、各々の巧みな取材手法を使い分け、番組制作を進めていった。度々の全国放送が見送られつつも、いよいよ放送前日となったある日、取材班に衝撃的な連絡が入った。その時、彼らがとった行動とは――「更生」とは。「贖罪」とは。そして「報道」とは。3年にわたる取材の全記録。【目次】【目次】はじめに第1章 その男との出会い第2章 偶然か、必然か 取材班結成秘話第3章 プリゾニゼーションの現実第4章 裁判記録、その入手までの長い道のり第5章 日本一長く服役した男“誕生”の秘密第6章 彼は「ありがとう」と唱え続けた第7章 刑務官たちの告白 無期懲役囚と社会復帰の理想第8章 遺族はいま 母との思い出を辿って第9章 もう一度、問いかけることができたなら終章 〈鏡〉としての日本一長く服役した男おわりに注・参考文献