この島で流れた涙と、この先も流れる歌のために。
「島唄」の三十年、沖縄を生きる十人との対話。
「ヤマトの人間がこの曲を発表していいのだろうか?」
音楽家・宮沢和史が沖縄戦の生存者から聞いた話に衝撃を受け、迷いながらも制作・発表した「島唄」。空前のヒットとなったこの歌は、沖縄の景色と宮沢自身の運命を大きく変えていくことになった。
それから30年、「自分はどんな顔をしてこの歌を歌い、沖縄を語っているのだろう」――
その葛藤を抱えながらも沖縄の島々のことを真摯に学び関わり続けた歳月と、音楽家として計り知れない影響を受けたその歴史や文化への思いを今こそ綴る。
また、「自分の目からは見えない沖縄の姿について話を聞き、沖縄のこれまでとこれからを考えたい」と、20代~90代まで、それぞれの場所で「沖縄」を生きる10人との対談を収録。
日本“復帰"から50年という節目に「沖縄を語る、この先の言葉」を探す、宮沢と沖縄の対話の書。
1 本人エッセイ(紙書籍版での分量:約150ページ)
沖縄でのシングル発売で火がつき、全国的な大ヒットとなる一方で批判も浴びた代表曲「島唄」から30年。ヤマトの音楽家として沖縄と関わり続ける歳月の中で考えてきたこと、ヤマトと沖縄の近現代を通じて変わらぬ非対称性な関係性に対する思い、沖縄の歴史や芸能文化への尽きせぬ愛情を語った、全10章のエッセイ。
2 対談パート(紙書籍版での分量:約300ページ強)
「自分から見た沖縄の姿を発信するのではなく、さまざまな形で『沖縄』を生きる人々との対談を通して、自分の知らなかった彼らの個人史や、沖縄の歴史の中における思いを知りたい」と、沖縄で生まれ沖縄で活動する人、現在は沖縄を離れた人、生まれ育ってはいないが自らの沖縄ルーツを深く考える人など、20代から90代までの10人と対談。
[対談] ※取材順
具志堅用高(元ボクシング世界王者)
「沖縄人お断り」の時代を生きた人たちのために
山城知佳子(現代美術家)
経験し得ない記憶、語られなかった声を聴く
大工哲弘(八重山民謡歌手)
沖縄の“来たるべき言葉"はどこにあるのか
又吉直樹(お笑い芸人、作家)
記憶と生活に流れ込み、歴史と接続する「沖縄」
中江裕司(映画監督) 野田隆司(桜坂劇場プロデューサー)
「土地から生えている文化」とどう向き合うか
島袋淑子(元ひめゆり学徒隊員・ひめゆり平和祈念資料館前館長)
普天間朝佳(ひめゆり平和祈念資料館館長)
戦争の記憶と何度でも「出会い直す」場所として
平田大一(演出家)
「斜めの景色」を提示し、土地の尊厳を取り戻す
西由良(「あなたの沖縄 コラムプロジェクト」主宰)
個人史が出会うところにある「対話の可能性」を信じて
表紙写真:野村恵子
歴史・文化記述監修:前田勇樹、濱地龍磨、栫大也、古波藏契、秋山道宏
ブックデザイン:加藤賢策、守谷めぐみ(LABORATORIES)