2005年に周辺13市町村と合併し、晴れて政令指定都市に移行した新潟市。
新潟市政が施行された1889年から比較すると、面積は約60倍、人口は約18
倍にまで増加した。現在は8区で構成され、特徴が大きく異なるそれらの区は、
それぞれで個性豊かなまちづくりを行ってきた。かつての亀田町や豊栄市、新
津市、巻町は今でも旧制に対するこだわりが強く、産業構造や文化的風土も異
なっている。ただ全体では米どころゆえに飯はうまいし、日本海の恵みによ
って新鮮な海産物も豊富。自然の豊かさでは、政令市の中でも群を抜いている。
しかも本州日本海側で唯一の政令市とあって、県内外から人が流入する「ダム
都市」としての期待を背負って、ニュー新潟市は華々しくスタートした。
だが、ここまでの経緯を辿ってみると、新潟市は防戦一方だ。人口は右肩下
がりで減少し、2020年には、ついに80万人の大台を切ってしまった。死亡
数が出生数を上回る「自然減」に加え、転出が転入を上回る「社会減」も増加
傾向にある。若者が進学や就職の際には県外へと流出するという少子高齢化の
3モデルケースから抜け出せていないのだ。そして人がいなくなれば産業が先細
りするのは当たり前で、新潟市の新規開業率は政令市で最低クラス。その上、
驚くべきことに黒字であっても後継者不足で廃業するケースも増加。税収の減
少による公共サービスの低下も叫ばれている。
そんな現状を打破すべく、新潟市は中心市街地の大改造に踏み切った。玄関
口の新潟駅は南北の回遊性を高め、南口には中長距離バスターミナルも建設予
定。旧大和跡地には古町ルフルがオープンし、あちこちでマンション開発も行
われている。だが、市が進軍ラッパを威勢よく鳴らしても、市民の市政への目
は冷ややかだ。モータリゼーション解消のために立ち上げたBRTは痛烈な批
判を浴び、利用者が伸び悩むどころか、早くも「無用の長物」呼ばわりされて
いる。そんな中で新潟市の大改造が成功し、魅力的な街に発展する可能性はあ
るのだろうか? 本書では、新潟市がこれまで辿ってきた歴史を掘り下げ、街
の特徴や住民気質に迫りつつ、現在抱えている各区の問題点や課題をあぶり出
していく。果たして新潟市は、直面している苦境を脱し、高く飛翔することが
できるのか。その可能性を探っていこう!