仙台市は、自他ともに認める東北最大の大都市だ。大学進学や就職、あるい
は遊びを目的に東北地方の若者たちを引き寄せ、人口は約107万人にも上る
(2020年10月1日現在)。仙台駅前には高層のオフィスビルやタワーマンシ
ョンが建ち並び、さらに街中には巨大な歓楽街を抱え、郊外を見渡せば巨大な
ニュータウンがベッドタウンを形成している。近隣市を含む仙台圏域まで広げ
ると、人口は200万人を超える。その存在感は、まさに威風堂々。伊達政宗
によって築かれた都市は、今や東北の“東京”といっても過言ではない。
その一方で、都市的な発展を続けてきたせいで、仙台という街や人のイメー
ジは知名度に比べて希薄だ。仙台と聞いて一般人が思い浮かべるのは牛タン、
ずんだ、伊達政宗ぐらいだが、いずれも仙台人の生活習慣や気質を表している
とはいいがたい。「杜の都」というだけあって、本来持ち得ている魅力や特徴が、
緑の茂みの中に隠れてしまっているかのようだ。実際に“東京化”が進みすぎ
て、仙台らしさを喪失していると嘆く地元有識者も少なくないのである。
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さらに、これまで仙台を支えてきた人口の増加も、2021年には減少に転
じるといわれている。そうなれば、巨大なベッドタウンは空洞化し、駅前のア
ーケード商店街の活気は失われるかもしれない。十数年前から地方都市で起き
ていた衰退の波が、今になって仙台へと押し寄せるのか? いつまでも東北最
大というブランドにあぐらをかいていると、未来は暗いままかもしれない。今
の仙台には、従来の殻を突き破って「新たな仙台」を築くべき転機が来ている。
最善手を打てれば、迫りくる暗雲を払拭できる可能性は大いにある。
そこで、本書では仙台の歴史や、プライドが高いといわれがちな仙台人気質
といった、街や人の根っこを掘り起こしつつ、地元民ですら気づいていなかっ
た魅力を掘り下げる。と同時に、各区や近隣都市で頻繁に行われている再開発
やまちづくりの是非を検証し、仙台の街の成長を妨げる問題点や課題を、客観
的なデータや現地取材で得た証言と筆者の主観を交えながら論じていきたい。
仙台は地方都市として没落していくのか、それとも東北を率いる政令指定都
市として再び明るい未来を突き進むのか? 仙台の本質をあぶり出し、その進
むべき未来について、これから探っていくとしよう!