広島県はかなりの有力県だ。中国四国地方の中核県であり、経済規模も大き
い。さらにいえば、結局長期のデフレ不況を脱していなかったことが明白にな
った日本において、広島県は数少ない「成長県」である。一時は「自虐キャン
ペーン」なんてものを行い、どうにも自信なさげに見えた広島県だが、実は結
構長いこと成長を続けてきた優良県だったのである。
だが、主要4大都市、広島、呉、尾道、福山を比較してみたらどうだろうか。
広島市は実際目に見えて好調だが、他の3都市も同様かと言われれば疑問符が
つく。呉、尾道は人口減少が止まらず、頼みの観光業も災害やパンデミックの
前には脆弱だ。福山も昔日の繁栄に比べると、今はまだまだ寂しい状況。各地
がそれぞれ、いくつもの問題を抱えている。
実際、広島県には安定感がない。県の象徴である広島東洋カープがいみじく
も象徴しているとおり、一時最強を誇っても、ちょっとしたきっかけですぐに
沈んでしまう。実力がありながら、「自虐」傾向があったりするのは、こうし
た広島県の不安定さを、県民は肌で感じているからなのかもしれない。
だが、それでも広島県の歩みは止まらない。2020年に世界を覆った新型
コロナウイルス感染症の大流行下においても、広島駅のさらなる拡大や、福山、
三原の再開発など、経済の動きは活発だ。これは、それまで地域の中心である「一
流」であった広島県が、地域の枠を越え、超一流県へと羽ばたこうとしている
ようにもみえる動きだ。
それでもなお、広島県の不安は色濃く残る。カープがリーグを連覇し、広島
県の経済状況が絶好調の時ですら、県民の本当の実感は不安だらけだった。激
動の2020年代に、世界へ向けて躍進しようとする広島県に、どんな不安が
あるというのだろうか。
本書は、広島県4大都市の現状と課題、その歴史と県民性の分析から、広島
県の実像を探っていく一冊である。長期の取材と資料分析の結果、見えてきた
広島県の真実と未来とは、ぜひ一緒に、ご覧いただきたい。