鹿児島県は特に近代、日本の歴史において非常に重要な位置を占めた土地です。
行き詰まった武家政治から近代国家への急激な転換を、驚くほど素早く、
また考えられる限り最小の犠牲で成し遂げ、明治維新の主力となったのが、鹿児島県なのです。
この偉業の大きな要因として、鹿児島が他の地域から隔絶された「密国」であったことが挙げられます。
情報収集と根回しの失敗で滅亡の危機に瀕した関ヶ原の反省を踏まえ、
当地を治める薩摩藩は江戸時代、外部からの情報収集には尋常ではない努力を払いました。
しかし、国内への進入が事実上不可能だったので、
トップレベルは外のことを知っていても、一般民衆レベルでは「鎖国」状態でした。
それゆえ、当時の「日本人」というくくりの中ではかなり異質な存在であり、
薩摩弁が多くの方言の中でも相当特殊な部類に入るのはその典型といえるでしょう。
こうした背景があったことで、鹿児島県人は他県の日本人のように状況に流されず、
効率的に動けたのが、明治維新だったのではないでしょうか?
あれから百数十年。鹿児島は今、新しい転機に立たされています。
他の地域からの交通アクセスが非常に悪い鹿児島は、
時代に大きく取り残された存在となっており、九州新幹線が開通したことで変化はしているが、
その恩恵はまだ鹿児島中央駅と鹿児島市にしか見受けられないのです。
本書は、さまざまな観点から「今」の鹿児島を解き明かしていきます。
歴史背景、各種データ、鹿児島人という「人種」。
リアルな鹿児島県の姿を発見した時、新しい鹿児島の未来を探るヒントが、きっと見つかるでしょう!