本書は、地域批評シリーズの記念すべき四国上陸第一弾である。
岡山県で生まれ育った筆者にとって、
香川県は近いような遠いような微妙な土地といった印象がある。
なにしろ、全国でも特異な例として民放テレビが両県にまたがって同じ番組を放送しているため、
香川県の情報を得る機会は多かったのだ。
それでも、香川県は長らく海の向こうの、ちょっとローカルな土地であるという意識が強かった。
というのも、かつて香川県に行く手段といえば、
宇野港からのフェリーか、宇野線経由の宇高連絡船が定番ルート。
すなわち、船で行かなければならない遠い島だったのである。
この距離感によって、人の悪い岡山県人のみならず、
全国の人が香川県を筆頭として四国全体を発展途上の孤島と見ていたことだろう。
しかし、1988年の瀬戸大橋の開通で状況はがらりと変わった。
気がつけば、香川県は「うどん県」なる奇妙な名称で全国区に。
さらには、直島のベネッセハウスミュージアムを中心としてアートの栄える地域として売り出したりと、
県をあげて、ネアカな観光地になってきているのだ。
一方で問題も山積みである。
「うどん」や「アート」で盛り上がっているのもしょせんは、ごくごく一部の地域に過ぎない。
県内にだってうどん文化圏ではない地域もあるのに、
そんなものは存在しないかのように扱われているではないか。
もはや四国の玄関口じゃなくなり、「うどんだけじゃない」を掲げながらも、
ホントに目立つモノがなんにもない香川県が、だけじゃなくすることなんかできるのだろうか?
本書は徹底的に追求し尽くした一冊である。