本書は静岡県浜松市民の「本当の姿」に挑戦した一冊である。
浜松市は度重なる合併を経て2005年、11市町村を版図に加える超広域合併を見事に実現、
県内最大の80万都市として再出発をした。
そんな浜松の代名詞は、徳川家康から連綿と続く、立身出世に燃える野心の精神といえる。
時代に翻弄される家康本人が「今に見ていろ」と雌伏の時を経て、大きな野望をつかみ取る礎としたのがこの地であり、
浜松城からはその後、5人もの城主が江戸幕府の老中へと 上り詰めた。
浜松城をして、出世城の異名を取るのも納得である。
一方で、東京と名古屋の中間地点に当たる宿場町として古くから栄えた浜松は、文字ど おり地の利を生かし、あるいは温暖な気候を武器にして発展していった。
第二次世界大戦 時の浜松大空襲という大打撃さえはねのけて、昭和以降、織物業をルーツとする工業の街 として大発展を遂げる。
江戸までの政治から工業へと大きく舵は切られたが、「負けてたま るか」という「やらまいか精神」は同様で、この浜松魂を力に成就させてきた。
しかし現代、全国的な交通網の整備、世界基準のグローバルなもの作りが求められている中、工業立国・浜松の向かう先には何があるのか。
長引く不況に立身出世も容易ではない。
出世・野心で版図を広げ、もの作りの実力を世界に知らしめてきた浜松市は、今、どこへ 向かっているのか。
取材やデータを元に本書が解き明かす。