東京都の西部にドーンと控える大都市・八王子。
多摩地域の中心都市にして人口約58万人。
だがそんなに人がいても、ハコ(市の面積)自体が巨大だから
人口密度は高くなく、豊かな自然に恵まれていることもあり、
どことなくゆったりとした雰囲気を醸し出している。
市街地を少し離れると、
「えっ、ここどこの田舎?」と思わず口ずさんでしまうぐらいの“スカスカ感”で、
その見てくれは東京の都市というより地方の巨大都市といった風情である。
そんな八王子は歴史のある街だ。
江戸時代には甲州街道最大の宿場町として繁栄し、商都として発展してきた。
こうした歴史のある街は、得てして古くから住んでいる
“旧住民”の存在感が強い。旧住民(特に高齢者)たちは、
この街を自分たちが作ってきたという意識があるためプライドが非常に高いのだ。
そうした閉鎖的な旧型社会に飛び込んできたのが“新住民”たちである。
1960年代以降、多摩ニュータウンを筆頭に大規模な宅地開発が行われ、
八王子と縁もゆかりもなかった人々が大量に当地に流入してきた。
近年も新たなニュータウンの開発が行われており、
八王子とその周辺は新たな住民を飲み込み続けている。
だが、こうした新たな人の流入が、大なり小なり摩擦を生んでいるのもまた事実だ。
そこで本書では、八王子の旧住民と新住民、
それに加えて学都として発展したことで増えた“学生(大学生)”の3者を
テーマの中心に据えて取材や調査を敢行。
現在の八王子市の実態を浮き彫りにすると共に、
新住民の巣窟たる多摩ニュータウン全域まで調査エリアを広げて、
その実状と問題点を探っていった。
ぜひ最後までお付き合い願いたい。