2011年3月11日――。
東日本大震災が発生した、この日を境に日本は変わった。
我々は、否応なしに物事の見方や価値観の変更を迫られた。
そうした中、ひとつはっきりしたことがある。
それは東京の歪さであり、東京一極集中がいかに脆いものであるか、だ。
福島第一原発の事故の深刻な状態が露呈していくにつれ、それがより明確になっていった。
まずは被災した東北・北関東の復興を切に望みたい。
そして今こそ、東京以外の地方が真に自立し、力を発揮していくべき時なのではないか。
そこで、名古屋の存在が改めてクローズアップされる。
振り返れば、前年の2010年は名古屋の年だった。
河村たかし名古屋市長が減税など公約の実現を掲げ、市議会の解散へと突っ走る。
「COP10」や「あいちトリエンナーレ」といった注目の行事が開催された。
中日ドラゴンズや名古屋グランパスがリーグ優勝を果たすなど、
スポーツでも圧倒的な強さを見せつけた。
2008年のリーマン・ショック以降、元気を失っていた名古屋が再び浮上したのだ。
かつて、名古屋は200万都市にもかかわらず「大いなる田舎」と言われ、
嘲笑の対象でしかなかった。
もちろん「突っ込みどころ」は満載だが、
一方で独自の進化・発展を遂げた稀有な都市でもある。
河村市長が言うように、独立できるほどの可能性を秘めている。
本書では、現地取材やデータ収集により、
奥深くて底知れない名古屋の姿をあぶり出すことに努めた。
今、われわれには確信がある。
「名古屋がニッポンを救う日」がきっと来るはずだ、と。