みなさんは「川コン」という言葉をご存じだろうか?
これはある言葉を略した造語で、川は川崎を表している。
ではコンのほうは? コンビナート?
いやいや川崎だけにそう答えたいところだが、コンはコンプレックスの略。
そう川コンとは「川崎コンプレックス」のことなのだ。
この地域批評シリーズで川崎市を扱うことになり、
手始めに川崎市について川崎市民に話を聞いてみると、
その歴史からくる負のイメージのために、「おらが町」に対してコンプレックスというか、
自信を持てない人がけっこういるんだなあと、つくづく思った次第。
「どうせ川崎だから……」街が再開発で立派になって市民は喜んでいるものの、
内心では疑心暗鬼。
またこれと同じセリフが、川崎市を挟む東京都や横浜市の住民からも聞かれる。
そこには「どんなにパッケージは良くなっても所詮は川崎」という悪意が込められている。
これでは川崎市民が卑屈になり、我が街に誇りを持てなくなるのも無理はない。
危ない、汚い、怖いなどのイメージでくくられてしまう川崎。
しかし、それだけで川崎を考えるのはいかにも短絡的である。
東京と横浜に挟まれた細長い川崎は、
地域によっては東京あるいは横浜との関係が強いため、
市内間の連携が薄いという特徴がある。
ゆえにそれぞれの地区が独自の進化を遂げている。
単一イメージでくくれるほど、川崎市とは浅はかな街ではない。
では、進化を遂げた今の川崎市とは一体どんな街なのだろう。
それを各種データと取材をもとに解き明かしていこうと思う。
大都市・川崎だけに、本書でそのすべてを語り尽くすことはさすがに難しいだろうが、
その真の姿の一端は垣間見えるはずだ。