本書は、地域批評シリーズの第2弾である。葛飾区という呼び名は、日本人には大変なじみのある地名だ。
なぜなら『男はつらいよ』と『こちら葛飾区亀有公園前派出所』という誰でも知っている長寿映画とマンガ、
それぞれの舞台になっているからだ。
そんな有名な葛飾区だが、実際に足を踏み入れたことのある人はどのくらいいるだろうか。
東京に残された数少ない下町風情が残るとよく聞くが、葛飾区の全体像にふれた書籍や記事というものは、あまり目にしない。
隣接する足立区が、ここ数年の格差社会ブームの中で、
生活保護受給者が多いとか、ヤンキーが多いなどと注目されているのとは、対照的である。
足立区は、格差社会の負け組で酷い酷いといわれているが、隣接する葛飾区の状況はどうなのだろうか。
葛飾区は、下町の象徴のようにいわれてはいるが、それは本当なのだろうか?
地図を見ると、鉄道がカバーできていないだろう地域が多く見つかるし、区内を走る主な鉄道は京成線。
JRと地下鉄の密集に慣らされている東京都民は、これだけで「不便な街だなー」と思いがちだ。
また、街はというと葛飾区には大企業が数多く本社を構えているイメージは当然なく、
あるのは『男はつらいよ』でおなじみの町工場と、あまり近代的とはいえない住宅街だ。
本書は葛飾区のイメージを、様々なデータ分析と取材により、裏付けたり、はたまた覆したりすることになる。
比較対象として、隣接しながら「いっしょにするな!」と葛飾区民がアピールする足立区を使わせてもらった。
葛飾区の本当の姿を見てみたいと思う人は、ぜひ最後まで読み進めていってほしい。