圧倒的な筆力で、数々の賞を総なめにしてきた乙川優三郎が到達した地平!
心は、色褪せてはいない。人生の後半にさしかかった女と男。艶めいた思い出と、思いがけない出来事で揺れる。八篇の物語がかきたてる勇気と感動。
乙川は、「悲しみ、苦しみのないものを書こうとは思わない」という意図のもと、楽しいだけの話ではなく、「苦しみの末のハッピーエンドを予感させる物語」を描く。
地先とはその土地から先へつながっている場所。
*御宿海岸の砂丘が月の沙漠とよばれるようになったのは、画家で詩人の加藤まさをが童謡『月の沙漠』を生み出したのが御宿だったから。
その後も平塚らいてうや、伊藤野枝、大杉栄を迎えいれ、人生劇場を執筆前の尾崎士郎、週刊新潮の表紙を描く前の谷内六郎など、病弱や、金のない若者を迎えいれた御宿のうみは優しく、人々は暖かった。
作家の柚木も御宿の海で癒やされ、活力を得た。…(「海の縁」)
他八篇の豊潤な文学!