S医大で医療ミスにより少女が死亡した。
S医大はS県の医療界を牛耳る丸島一族に支配されている。病院ぐるみで事件の隠蔽が図られた。
小野寺賢は医療過誤のカルテ改ざんに加担したが、良心の呵責に耐え切れず、ブラジルへと渡る。
医大生時代に恋人だったブラジルからの留学生マリヤーニをたよって日本を逃げだしたのだ。
だが、ブラジルの現実はもっと悲惨なものだった。
マリヤーニはHIV患者を救済するNPOのメンバーとして活動していた。ブラジルが推進しようとしているジェネリックス薬開発の賛同者でもあった。
ジェネリックスを開発するために、米国の薬品メーカーから不法に製造法を盗み出し、独自にコピー品を作るという危険な活動をおこなっているのだ。
ファベーラと呼ばれるスラムを拠点に絶望的医療活動に従事するマリヤーニの姿に、小野寺は自分が失っていた医師としての本来の姿を発見する。
彼女たちに共鳴する小野寺だったが、米国医薬会社がマフィアを使って容赦ない弾圧に乗り出した。
書き下ろしヒューマンサスペンス