生活者そして知識人としてのデザイナー12年間のクロニクル。
長年にわたりブックデザイナーとして活動し、デザイン、写真、映像についての批評でも知られる著者が、2005年から2016年までの12年間にわたって日常や社会の諸相に巡らせた思索の軌跡。
『at』『atプラス』『市民の意見』『十勝毎日新聞』という三つの媒体に寄稿した連載エッセイと読書アンケートを中心に収録する。
経済や情報のグローバル化を背景に、人々の価値観や公共性の枠組みが大きく変容していった時期に書かれたこれらのエッセイは、出版にかかわるデザイナーならではの同時代批評であり、デザインについて語らないデザイン論でもある。
市場経済のデザイン言語から離れ、私たちの足下から立ち上がる思考の地平。
「カラーのプレゼンをチョイスするだけの編集者は、編集者なのではなく消費者なのだと思う。(中略)
ひとは消費者であってはいけないと思う。むろん、ひとは消費者でなければ生きていけない。
消費者でありながら消費者であることをヤンワリと拒む生き方を探したい。」
(本書所収「かしこい消費者」より)