日常は哲学的な問いに満ちている――日常的観点からは当然のように思われることでも、哲学の歴史をひもとけば、これをめぐって多くの紛糾した議論がなされてきた。
何の変哲もない代わり映えしない風景。昨日も今日も変わらない出来事の繰り返し。それらを見て聞いて普段通りと感じる〈私〉の繰り返し。私たちの日常は、日々繰り返している物の知覚と出来事の理解から成り立っている。
本書は、このように私たちの日常の秩序を支える純然たる物としての物の知覚と、物の世界での出来事の理解を、哲学史にでてくる概念や専門用語を使わず、日常の言葉で哲学的に省察する。世界の見え方を刷新する画期的論考。
*『知覚する私・理解する私』(勁草書房、1993年)を改題・増補して文庫化。
[主な内容]
はしがき
第一章 知覚における対象性成立の論理
第二章 知覚的質と本当に在るもの
第三章 因果的理解と行為
第四章 法則の概念と出来事の始まり
本文の哲学史的背景についての注解
注
あとがき
学術文庫版あとがき