卓越した推理力と正義の投げ銭が悪党を退治する痛快時代小説!芝三島町の学寮の角で土地の遊び人「疾風の綱吉」という男が殺された。背後から1箇所、肩甲骨の下あたりを狙ったように心臓へかけてやられていて、大の男でもひとたまりもないような大きな傷。この辺りの縄張りは、柴井町の友次郎という御用聞き。早速調べてみるが、この綱吉、やくざ者だが男振りも評判も良い男で、人に恨まれるような人間でもない。懐の財布も残っていて、物盗りでもないようだ。友次郎が綱吉の傷口を調べてみると、凶器は大工の使うノミのような物と思われる。やがて、下手人として綱吉と女を取り合っていた辰五郎という男が挙げられる。ところが、辰五郎は八五郎が平次のところへ転がりこむ前に、暫く世話になった男。八五郎は辰五郎が人殺しをするような人間ではないと友次郎を説得するが、まったく譲らない。困りきった八五郎は平次に助けを求めるが――。