腐敗しきった政治の中、反骨心を持った義の雄たちが、官に対する不満を胸に各地より梁山泊へと集い始める。林冲をはじめ、王進、李逵、武松、呉学人、楊志、宋江など続々と梁山泊を目指し、躍動を始める――。中国最大の伝奇小説を、吉川英治が大胆に意訳。生身の人間の夢と欲望が壮大な世界観の器に盛られ、興奮の一大マンダラと化す。・隣りで売る和合湯の魂胆に、簾もうごく罌粟のの性の事・色事五ツ種の仕立て方のこと。金蓮良人の目を縫うこと・梨売の兵隊の子大人の秘戯を往来に撒きちらす事・姦夫の足業は武大を悶絶させ、妖婦は砒霜の毒を秘めてそら泣きに泣くこと・死者に口無く、官正道なく、悲恨の武松は訴える途なき事・武松、亡兄の怨みを祭って、西門慶の店に男を訪う事・獅子橋畔に好色男は身の果てを砕き、強慾の婆は地獄行きの木驢に乗ること・牢城の管営父子、武松を獄の賓客としてあがめる事・将門神を四ツ這にさせて、武松、大杯の名月を飲みほす事・城鼓の乱打は枯葉を巻き、武行者は七尺の身を天涯へ托し行くこと・緑林の徒も真人は啖わぬ事。ならびに、危かった女轎のこと・花燈籠に魔女の眼はかがやき、又も子宋江に女難のあること・待ち伏せる眼と眼と眼の事。次いで死林にかかる檻車のこと・秦明の仙人掌棒も用をなさぬ事。ならびに町々三無用の事・弓の花栄雁射梁山泊に名を取ること・悲心、長江の刑旅につけば、鬼の端公も気のいい忠僕に変ること・死は醒めてこの世の街に、大道芸人を見て、銭をめぐむ事・葦は葦の仲間を呼び、揚子江の“三覇”一荘に会すること・根はみな「やくざ」も仏心の子か。黒旋風の李逵お目見得のこと・雑魚と怪魚の騒動の事。また開く琵琶亨の美酒のこと・壁は宋江の筆禍を呼び、飛馬は「神行法」の宙を行くこと・軍師呉用にも千慮の一失。探し出す偽筆の名人と印刻師のこと・一党、江州刑場に大活劇のこと。次いで、白竜廟に仮の勢揃いのこと・大江の流れは奸人の血祭りを送り、梁山泊は還の人にわき返ること・玄女廟の天上一夢に、宋江、下界の使命を宿星の身に悟ること・李逵も人の子、百丈村のおふくろを思い出すこと・妖気、草簪の女のこと。怪風、盲母の姿を呑み去ること・虎退治の男、トラになること。ならびに官馬八頭が紛失する事・首斬り囃子、荷を練る事。並びに、七夕生れの美女、巧雲のこと・美僧は糸屋の若旦那上がり。法事は色界曼陀羅のこと・秘戯の壁絵もなお足らず、色坊主が百通いの事・友情一片の真言も、紅涙一怨の閏語には勝らずして仇なる事・薊州流行歌のこと。次いで淫婦の白裸、翠屏山を紅葉にすること・祝氏の三傑「時報ノ鶏を蚤に食われて大いに怒ること・窮鳥、梁山泊に入って、果然、ついに泊軍の動きとなる事・不落の城には震いとばされ、迷路の闇では魂魄燈の弄りに会うこと・二刀の女将軍、戦風を薫らして、猥漢の倭虎を生け捕ること