※本書はリフロー型の電子書籍です。ご購入前にお使いの端末にて「無料サンプル」をお試しください。【1400年におよぶ日本人と疫病神の共棲】〈本書の内容〉人びとがまだバクテリアだのウイルスだのという存在を知らない時代――。しかし、どのような時代であれ、その病は、どうしようもなく蔓延していた。それは「疫【えき】」と総称された。疫は、さまざまにある。天然痘、赤痢、麻疹(はしか)、風疹、虎列剌(コレラ)、窒扶斯(チフス)、黒死病(ペスト)、流行性感冒、日本住血吸虫症、日本脳炎などで、どれも恐ろしい疫病だった。ひとたびかかれば、明日の命も知れないという恐ろしさだった。誰もが、この疾病の正体を知りたいと欲した。なぜ、こんな恐ろしい病にかかるのだろう。なぜ、こんな憎らしい病が存在しているのだろう、と。けれども、顕微鏡どころか虫眼鏡すらない時代である。誰にもわからなかった。時代が下るにつれて、少なくない人達が見当をつけ始めた。――よこしまな神霊が、知らぬうちに取りつくのではないか。――憑依して病に伏せさせ、さらに別な者に移ってゆくのではないか。神霊の呼び方は悪霊、悪鬼、邪鬼、疫鬼などと時代の変遷につれていろいろと変わっていったものの、病をもたらす何者かがいるのではないかという推測が否定されることはなかった。そのように変遷した呼び名の中で、最後まで変わらずに呼ばれ続けた言い方がある。疫神、である。もしくは、疫病神【やくびょうがみ】。(本文〈序 疫神のこと〉より一部抜粋)歴史を変える流行病「疫病神」との共生。我々の祖先はいかに生きてきたか。その生きざまに感動する日本人必読の12の物語。神は乗り越えられる試練しか与えない……。〈目次〉序 疫神のこと第一幕巻の一 丹の国(崇神天皇×疫癘)崇神九年・皇紀五七二年巻の二 仏法を以て防疫と為す(聖徳太子×天然痘)推古三十年・西暦六二二年巻の三 阿修羅開眼(光明皇后×天然痘)天平九年・西暦七三七年巻の四 遷都と豌豆瘡(和気清麻呂×天然痘)延暦十三年・西暦七九四年幕 間 疫神の赤第二幕巻の五 御霊会(卜部日良麿×赤痢・流行性感冒)貞観十一年・西暦八六九年巻の六 護符と花鎮め(良源×赤痢・感冒・天然痘・麻疹)康保三年・西暦九六六年巻の七 椿説弓張月(源爲朝×疱瘡・バク)嘉応二年・西暦一一七〇年幕 間 疫神の象第三幕巻の八 鎌倉結界図会(安陪国道×咳逆・疱瘡)元仁元年・西暦一二二五年巻の九 神田将門縁起(他阿真教×疫病)嘉元三年・西暦一三〇五年巻の十 ワクチン事始(桑田立斎×カムイタシュム)慶応四年・西暦一八六八年幕 間 疫神の祭第四幕巻の十一 アジアの疫神(高木友枝×ペスト)明治二十七年・西暦一八九四年巻の十二 ドイツの桜(肥沼信次×チフス)昭和二十一年・西暦一九四六年結 疫神の国〈著者プロフィール〉秋月達郎(あきづき・たつろう)1959(昭和34)年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、東映映画のプロデューサーを経て、1989年(平成元)に作家デビュー。以降、歴史やファンタジーを題材にした作品を数多く発表している。おもな著書に『真田幸村の生涯』『天国の門』『信長の首』『火螢の城』『マルタの碑』『奇蹟の村の奇蹟の響き』『水晶島綺譚』『海の翼』『学校の怪談』のほか、時代小説シリーズ「京奉行 長谷川平蔵」や、推理シリーズ「民俗学者竹之内春彦」などがある。最近刊は『小説 刀剣幻想曲―三日月宗近、山鳥毛、にっかり青江……刀をめぐる九つの物語』(ホビージャパン)。