北極圏まで渡るアジサシ、捕食者たちから逃れるサバのドラマ、産卵場所である深海に帰るウナギの長い旅路。古典的ベストセラー『沈黙の春』、『センス・オブ・ワンダー』の著者レイチェル・カーソンが、海のエコロジーの魅力を伝えた処女作、待望の復刊。アメリカ漁業局に勤めながら綴った科学と詩情を織り交ぜた名文により、誰もが海辺に生きる生き物の視点で世界を見ることの豊かさと、見事な命のつながりのドラマに引き込まれていくであろう。■内容はじめに一部 海辺――海のドラマ第一章 上げ潮第二章 春の飛翔第三章 北極圏の出会い第四章 夏は終わった第五章 海へ吹く風二部 カモメの道――カモメが俯瞰する海のなか第六章 春の回遊第七章 サバの誕生第八章 プランクトンの狩人第九章 港第十章 海路第十一章 小春日和の海第十二章 網あげ三部 川から海へ――生命の回遊第十三章 海への旅第十四章 海の越冬地第十五章 回帰本書に登場するおもな生き物訳者あとがき解説・阿部治■著者について原著 レイチェル・カーソン(Rachel Carson)1907年5月27日 - 1964年4月14日アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれ、1960年代に環境問題を告発した生物学者。アメリカ内務省魚類野生生物局の水産生物学者として自然科学を研究した。 農薬で利用されている化学物質の危険性を取り上げた著書『沈黙の春』(Silent Spring)は、アメリカにおいて半年間で50万部も売り上げ、後のアースディや1972年の国連人間環境会議のきっかけとなり、人類史上において、環境問題そのものに人々の目を向けさせ、環境保護運動の始まりとなった。没後1980年に、当時のアメリカ合衆国大統領であったジミー・カーターから大統領自由勲章の授与を受けた。翻訳 上遠 恵子(かみとお・けいこ)1929年東京都生まれ。東京薬科大学卒。大学研究室勤務、学会誌編集者を経て、現在エッセイスト、レイチェル・カーソン日本協会理事長。1974年、ポール・ブルックス『生命の棲家』(後に『レイチェル・カーソン』と改題)を訳出。以来カーソン研究をライフワークにする。訳書にカーソン『センス・オブ・ワンダー』『海辺』『潮風の下で』などがある。