砦を抱き、騎士が駐屯する国境の街・アローナの収穫祭は、「嫁取り祭り」ともいわれている。祭りの日に想いが通じ合った二人は、生涯仲睦まじく暮らせるという。アローナの宵祭りをめぐる市井の男女の恋の行方。同期と二人で街の哨戒に出ていた強面の騎士ダグラスは、通りの向こうからガラの悪い男が女性に絡んでいる声を聞く。現場に駆けつけてみると男はドラ息子のダン、女性は仕立屋のティエリである。街一番の美人のティエリは、ダンから執拗に言い寄られ、その都度、こうしてダグラスらが退けていた。小さいころから泣き虫で男の子たちにからかわれてきたティエリは内気で男性が苦手だったが、ダグラスには心を開きはじめている。祭りが近づき、恋人とすごす特別な日のためにと、頼まれていた服を届けにいく途中だったという。そんなティエリが心配でダグラスはその日、彼女が店に帰るまで“護衛”につきながら、彼女の横顔をそっと盗み見るのだった。そして祭りの日がやってきた――。