「2050年脱炭素」に向けて舵が切られた日本。しかしその実態は、世界の潮流から大きく取り残されている。欧米では洋上風力発電や太陽光発電が普及して、再生可能エネルギーの電気代が大幅に安くなる一方、石炭に依存した日本の火力発電は、再生可能エネルギーの普及を妨げているばかりか、「RE100」(再エネ100%での事業運営)の実現やカーボンニュートラルの達成を遅らせる要因ともなっている。気候危機の進行を食い止めるために、今後、脱石炭への圧力がますます強まり、石炭火力発電所は「座礁資産」となることが予測されるため、欧米では石炭・石油からの投資撤退がすでに始まっている。EUやアメリカでは数百兆円規模を脱炭素に投じることが決まり、メガソーラー(大規模太陽光発電)の新設、自動車EV化の促進、数十万規模の充電ステーションの敷設、2030年代のガソリン車の実質販売禁止など、コロナ危機で傷んだ経済からの「グリーンリカバリー」が加速している。水害など温暖化による気候危機の影響が極めて大きい国の一つ日本。コロナによる経済打撃に加え、毎年のように頻発する異常気象が追い討ちをかける中、ピンチをチャンスに変えるために、いま何が必要なのか? 先進企業の取り組みとともに、日本の課題を浮き彫りにする。NHKスペシャル『激変する世界ビジネス “脱炭素革命”の衝撃』、BS1スペシャル『グリーンリカバリーをめざせ! ビジネス界が挑む脱炭素』など数々の番組を制作してきたプロデューサーによる渾身の提言。●目次序 章 止まらない「脱炭素」の潮流第1章 なぜいま、グリーンリカバリーが必要か第2章 なぜ金融界は変わったのか カーボンバジェットのリアル第3章 深刻化する気候危機 迫り来るティッピングポイント第4章 日本は追いつけるのか? ビジネスの現場を追う第5章 重厚長大も変化 産業界が挑むカーボンニュートラル第6章 ファッション・食料システム・建築 〝衣食住〟の挑戦第7章 めざすべき未来 グリーン×デジタル第8章 変わり始める私たちのライフスタイル第9章 資本主義で脱炭素は実現できるのか?終 章 これが日本のラストチャンス●著者紹介堅達 京子(げんだつ・きょうこ) NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー1965年、福井県生まれ。早稲田大学、ソルボンヌ大学留学を経て、1988年、NHK入局、報道番組のディレクター。2006年よりプロデューサー。NHK環境キャンペーンの責任者を務め、気候変動やSDGsをテーマに数多くの番組を放送。NHKスペシャル『激変する世界ビジネス “脱炭素革命”の衝撃』 『2030 未来への分岐点 暴走する温暖化 “脱炭素”への挑戦』、BS1スペシャル『グリーンリカバリーをめざせ! ビジネス界が挑む脱炭素』はいずれも大きな反響を呼んだ。2021年8月、株式会社NHKエンタープライズに転籍。日本環境ジャーナリストの会副会長。環境省中央環境審議会臨時委員。文部科学省環境エネルギー科学技術委員会専門委員。世界経済フォーラムGlobal Future Council on Japanメンバー。東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員。主な著書に『NHKスペシャル 遺志 ラビン暗殺からの出発』『脱プラスチックへの挑戦 持続可能な地球と世界ビジネスの潮流』。