福岡大学ワンダーフォーゲル部のヒグマ襲撃事件をはじめ、最近、急増しているクマによる事故の実態、原因を解明するノンフィクション。1970年7月、日髙のカムイエクウチカウシ山に登りにきていた福岡大学ワンダーフォーゲル部5人は、九ノ沢カールで幕営中、突然、ヒグマに襲われた。近くのにいた他大学の山岳部員に救助を求めるが、クマの執拗な攻撃に遭い、結局3名が亡くなってしまった。ザックを取りにもどらない、背中を見せて逃げないなど、いくつかの教訓を残し、当時は大変な話題となった。しかし、報告書は残っているものの、悲惨な事故だけに書籍にもならず、50年近く経過したために事件は風化してしまった。ところが、最近はクマの出没が多く、各地でクマの襲撃による被害が頻発している。福岡大学ワンダーフォーゲル部のヒグマ襲撃事故をしっかり検証するとともに、最近のクマとの遭遇被害の事例を追い、生態の解説をする。文庫化にあたり追記として、著者による最近のクマ遭遇事故の特徴などが追加された。本文の写真は、ツキノワグマの写真家澤井俊彦氏が野生のクマを活写している。