終戦の年、避けられぬ死への煩悶を抱きつつ訪れた憧れの上高地。父との葛藤を胸に対峙した穂高岳。青春と自然を綴った北杜夫のエッセー選集。昭和20年、昆虫や信州の自然への憧れから松本高校に入学した北杜夫は、避けられぬ死への悲痛な思いを抱えながら上高地を訪れる。その後、頑固で癇癪持ちの父でありながら、歌人としては畏敬すべき存在であった斎藤茂吉との軋轢に悩み、ひとり穂高岳と向かい合う。この経験を、作家はのちに「まさしく私の青春そのもの」と記す。また、1965年には、カラコルム遠征隊に参加、独特のユーモアを交えたエッセー、紀行文から『白きたおやかな峰』の背景を読み取ることができる。単行本未収録作品を含む、山のエッセー選集。