ブライトン岬で亡命王ヘルムートやクリスティーネの身を守り、ロザムンド王家の秘宝も守り抜いた一角獣の騎士たち。さらにはクリスティーネVI世が正式に王太女として即位したことを喧伝し、侵略国であるルブランスに大打撃を与えた。周辺国の動きも慌ただしくなり、国際政治の駆け引きも必要な、正念場ともいえる状況となった。ところが、アウステンダムの街で知り合った大道芸人一座の座長・ジュリアを手助けしようと護国府へ潜入した際、クリスティーネが重傷を負ってしまう。絶体絶命かと思われたが、“選定の雷”がジュリアの身に落ち、危機を脱する。〈赤〉の一角獣の騎士が誕生したのだ。アウステンダムの護国卿に新しく着任したディミールは冷徹な男だった。彼の追撃をかわすため、ジュリアの家族ともいえる一座の者を全員、国外へ脱出させなければならない。これまでにない激しい戦いの中、レジスタンスたちは思わぬ悲劇に見舞われる。「一体、どれだけの人が死ねばこの戦争が終わるんだろう」アンリは零れ落ちる涙が止まらなかった……。
聖なる一角獣を相棒に、ひ弱な少年が亡国を救う長篇ファンタジー小説「一角獣の見習い騎士」シリーズ、第三弾。電子オリジナル作品。
●日向真幸来(ひるが・まさき)
作家。3月10日生まれ、うお座のO型。生まれた時から名古屋在住。自宅裏山は城跡と古墳。歴史が好きすぎて、民俗学などの沼に落ちる。『夢売り童子陰陽譚』にて朝日ソノラマ新人賞佳作受賞。著書に『神殺しの丘』(ソノラマ文庫)、『春に来る鬼 骨董店「蜻蛉」随縁録』(B's-LOG文庫)、『競馬場に行きましょう』(アドレナライズ)、『若葉荘・三食守護神さま憑き』(ごきげん文庫)など。