建物が傾き、“勾配”がある裏店、その名も紅梅長屋──。
浅草阿部川町に佇むこの長屋に突如住み着き始めたのは、なんと南町奉行所与力の紅三十郎であった。
「市中目付役となり、世の中の道理を知れ」との、町奉行・遠山左衛門尉の命を受け、大家として入居したのだ。
承服できかねる左遷であったが、店子との日々の触れ合いで、徐々に心を開き始めた三十郎。
そんな彼のもとに、住人の一人、徳松が相談にやってきた。吉原の遊女・朝衣に恋い焦がれたものの、とある親方に落籍されてしまったという。しかも女の方も徳松と別れ難かったようで……。
二人のために腰を上げた三十郎であったが、その裏には意外な敵が待ち受けていた!
市井の真の恋と人情を描く好評シリーズ、第二弾!!