あらすじ鉋(かんな)職人の勘助は長屋で婚礼の送り膳を独りで食べた。娘のお千代の嫁ぎ先が大店ゆえに、祝いの席に出るのを遠慮したのだ。血の繋がらない娘と、死んだ妻。二人に知られてはならない秘密が勘助にはあった。ところが、十六年前のあの夜の出来事を、岡っ引きの市兵衛だけは知っていた……。市井(しせい)に隠れ棲む過去を持つ者と岡っ引きの、情と恩讐を描く表題作ほか、名手の腕が冴える感涙の傑作時代小説集!