ローツェ南壁とK2の冬季単独初登頂を果たした奈良原和志は、いよいよヒマラヤ最大の難関・マカルー西壁の冬季ソロ登攀に狙いを定める。だが情報収集のため現地に赴いた和志は、眼前の山容に慄いた。デスゾーンと呼ばれる8000m超の高所で巨人の額のようにせり出す壁は、頻繁な落石で登攀者を阻んでいた。確実な死の予感に襲われた和志。だが彼には挑まなければならない理由があった。登山の師・磯村が癌で余命宣告を受け、残された時間は僅かだったのだ。何とか成功を届けたい――和志は岩登りの聖地ドロミテで特訓を重ねた。しかし和志を敵視するフランス人マルクが卑劣な妨害工作を仕掛けてきて……。