僕も、これから一体どうすればいいのだろう。そもそも自分のお話なんて、これっぽっちだって存在していなかったのではないか、とそれさえ疑問に思えてくる。この白紙の解答用紙を眺めていて、改めてそう思った。詰まらない凡庸なお話の双六は、「上がり」なんてものも存在していないのかも知れない。(「王様の耳」より)
無気力で就職活動に積極的になれない大学生が主人公の表題作の他、偽名を使ってしか恋愛できない若者の懊悩を描いた「大きくまわって、三回転半」を併録。中篇小説集。
*大きくまわって、三回転半
*王様の耳
●竹野雅人(たけの・まさと)
1966年生まれ。東京都出身。法政大学経営学部卒業。大学在学中の1986年に「正方形の食卓」で第5回海燕新人文学賞を受賞してデビュー。1994年、『私の自叙伝前篇』で第16回野間文芸新人賞受賞。