「大丈夫だよ」と言葉で伝えるかわりに、周囲を笑わせることで「大丈夫」を伝えるのが関西人。
「おい、これテレビで全国に流れるぞ。関西人やねんからなんかボケてみせ、ボケてみせ」
「こんだけ応援したっとんのに立ち上がろうとせん。阪神といっしょや」
「あんな倒れ方もある、こんな倒れ方もある、建造物倒れ方博覧会や」
「まあこんなこと言うたらなんやけど、アパートの壁がまるごと取れてしもて中身がそのまま丸見えのやつ、あれ『リカちゃんハウス』そっくりやね」
「家の中で壊れんと残っとるのは、茶碗三つだけや」
「ええかげんにしてくれ! トン汁はもう、においかぐのもイヤや」
「これが震災使い回しグルメナンバーワンやったね。こういうのは、伝承せなあかん」
「こんな話題やから明るい話でいきたいと思ってます。なんで私の頭見まんねん?」
「日本じゅうからあらゆる悪いヤツが集まっとる、泥棒甲子園状態や」
「『いくぞきゅうごにボランティア、阪神大震災一九九五年』とか語呂合わせされて歴史の参考書とかに載るんやろなあ」
本書は、笑いをバネに、阪神淡路大震災を乗り越えたユーモア震災記。NHKの日本語教育センターの教材に採用されたのをはじめ、『朝日新聞』、『毎日新聞』、『潮』、『赤旗』など40以上のメディアで取り上げられた。“異色の震災本”として話題となった伝説の名著が、電子書籍となって復刊!
東日本大震災を経て、政府、マスコミの対応、あるいはボランティアの様子は、どれだけ進歩していたのか。それは本書を読んで、読者諸氏に判断してもらいたい。
推薦文 ユーモア震災記(田辺聖子)
1 男と女と震災と
2 避難所もろもろ事情
3 震災関西弁あいさつ辞典
4 炊き出し食い倒れよもやま話
5 ボランティア図鑑
6 震度7通信交通錯綜事情
7 地震当世胸算用
8 神戸人物往来
9 マスコミ瞬間血風録
10 がんばれ神戸? 心のケアむずかし事情
11 おっちょこちょい政治
●藤尾 潔(ふじお・きよし)
1966年、兵庫県神戸市垂水区に生まれ、東灘区で育つ。1990年、早稲田大学政経学部卒業後、ソニー宣伝部勤務を経て、ライターとなったとたん阪神淡路大震災。神戸の小、中、高と母校のすべてが避難所となる。以後、震災をテーマに取り組み、『大震災名言録』を出版する。著書に『早稲田大学おもしろ話』(光文社)ほか。