父の一周忌が済んだ夏の盛りのある日、中学二年生の昭彦は、母とともに滝上市の父の旧家に越してきた。そして、その少年と出会った。夏だというのに枯れ草があたりを覆い、池の表面には薄く氷が張っていた。ポシャッという水音とともに少年は消えて…。(「水底の顔」より)
モダン・ホラーの第一人者が贈る、珠玉の怪奇幻想短篇10本を収録。
*水底の顔
*生首を蹴る男
*魔像を穿つ
*蓋のない柩
*森に憩う
*かけすと拳銃
*野ざらし
*恐竜(ネッシー)に出会った朝
*ライヴ・スクリプト
*猫が出てきた部屋
●田中文雄(たなか・ふみお)
1941年東京生まれ。早稲田大学卒業後、東宝入社。70年代を中心にプロデューサーとして映画製作に携わる。1974年に『夏の旅人』で早川書房SF三大コンテスト佳作入選。1975年に『さすらい』で幻影城新人賞佳作入選。1986年東宝を退社して作家専業となり、ミステリー、ホラー、SFバイオレンスなどに健筆をふるう。草薙圭一郎名義では時代小説、架空戦記も発表している。