1989年6月4日、天安門広場に集まった学生たちが虐殺された「天安門事件」。中国共産党にとって大きな汚点となるこの事件は、世界に衝撃を与えた。そして、天安門事件で弾けた“種”は、東欧へ民主化の風として吹き、ベルリンの壁が崩壊し、ソ連の解体、冷戦終結、そしてアラブの春へと導いて行く。
だが、あなたは、天安門事件のことを、どれだけ理解しているだろうか。いま立ち止まって、「北京の55日」といわれたあの民主化運動を見直すことは、不透明なこれからの社会を読み解く足掛かりになることは間違いない。本書は、胡耀邦元総書記の哀悼のために集まった大衆運動から始まり、終結を意味するトウ小平の鎮圧報道までを追った、衝撃のドキュメントである。
●森田靖郎(もりた・やすろう)
作家。1945年、兵庫県出身。文革中に、中国・チベット地区を訪れ、辺境地に下放された都市青年との交流から中国への興味を抱く。改革開放、天安門事件、香港返還などを常に現場から発信し、中国をフレームにして日本への同時代メッセージを送り続けるルポで定評がある。主な著書に、『東京チャイニーズ』(講談社)、『スネーク・シャドウ』(朝日新聞社)などがある。