彼等……新人類と名付けられた種族は、誕生して間もない、未成、未完の存在だった。
現人類を母体とする幼児だった。
しかし、ただの幼児ではなかった。
そのことに――
現人類の一部支配階級は、すでに気付いていた。
そして、怯え、怖れ、その存在を、ひたすら嫌悪した。
だから……彼等は秘密の協定を地球上に張り巡らし、その新たなる存在を抹殺すべく活動を開始していたのだ。(「最後の新人類」より)
人類の終焉・後を継ぐ者との交代、その不可避のドラマを幻視する多彩な物語群。商業作家デビュー以前の作品である「舌」や「魚」を含め、全10本の短篇を収録。
・時の岸辺
・魚
・家守家の滅亡
・フルカネルリの館
・スプーン
・銀河倶楽部
・十夜
・最後の新人類
・仮面舞踏会
・舌
●川又千秋(かわまた・ちあき)
1948年、北海道小樽市生まれ。作家、評論家。慶應義塾大学文学部卒。学生時代よりファン活動を始め、SF専門誌で評論を発表。『火星人先史』で第12回星雲賞を、『幻詩狩り』で第5回日本SF大賞を受賞。他に『ラバウル烈風空戦録』シリーズ(中央公論社)、『亜人戦士』シリーズ(徳間書店)、『創星記』(早川書房)など著書多数。