23年前の早朝、“私”は、ある友人の電話で起こされた。数日前に街で見かけた、友人の妹・礼子が失踪したという。母親の頼みで礼子を探し始めた私は、その追跡行の果てに礼子を見つける。しかし彼女は、ナイフで背中を刺されて死んでいる父親の横で、手首を切って倒れていたのだった…。
また、その前夜、私の大学時代の友人だった影山が新宿のアパートで殺されていた、というニュースが流れた。数日前に、私が街で見かけた礼子と一緒にいた男、それは間違いなく影山だった。一体、影山と礼子にはどんな関係が…?
影山の勤める建設会社は、礼子の父親が勤める「加藤建設」と、入札を巡って激しい闘いを繰り広げていた。加藤建設の創業社長は10年前に建設現場で事故死している。今は妻のまさ江がオーナー社長として君臨しているが、実権は専務の黒沢が握っているという。
私は、これらの事件になにか関連性がありそうな気がしてならなかった……。
●十河 進(そごう・すすむ)
1951年、香川県生まれ。1975年に中央大学文学部文学科フランス文学専攻を卒業し、出版社に入社。広告写真誌『コマーシャルフォト』副編集長、カメラ誌『フォト・テクニック』編集長などを経て、現在は常務取締役。1999年からメールマガジン『日刊デジタルクリエイターズ』にコラム『映画と夜と音楽と…』を連載。それをまとめた『映画がなければ生きていけない1999‐2002』『映画がなければ生きていけない2003‐2006』(水曜社)によって第二十五回日本冒険小説協会特別賞『最優秀映画コラム賞』を受賞。2010年に『映画がなければ生きていけない2007‐2009』(水曜社)を刊行。