今度はぼそぼそと何人かで話している声が、僕の部屋の中で聞こえたんですよ。ちょうど僕が寝ているところから死角になっている、入り口辺りですよ。その声は、ミーティングか何かをしているような雰囲気でしたね。よく聞いてみると、何だかイヤなことを言ってるんですよ、これが。「川をどうする……川をいつ渡る」僕の部屋からはちょうど高瀬川が見えたんですよ。しかもこのホテルから一〇分もかからないところにこの川がある。何だかいやだなあ、と思っているうちに……。(「ホテル・旅館」より)
怪談の名手・桜金造が語る、恐怖の体験談! その第2弾が大幅な加筆修正を経て、電子で復刊。
*さまよっている霊
*ガラスにぶつかった死体
*電車
*お札
*いる? いない?
*肝試し
*あの世の年齢
*ホテル・旅館
*身内の話
●桜金造(さくら・きんぞう)
1956年、広島県生まれ。コメディ集団「ザ・ハンダース」の結成・解散を経て、アゴ勇と共にお笑いコンビ「アゴ&キンゾー」としての活動をスタート。俳優として、伊丹十三監督の映画『タンポポ』『マルサの女』のほか、数多くの映画・TVドラマに出演。近年は、怪談の語り手としても活躍している。