コワルスキーは、チャイナ・ドレスの下で露わに蠢く女の肉体に、舌舐めずりした。「ヘヘ、エヘヘ……男は愛する女のためなら、たとえ犬死であっても生命を投げだすものなのさ……」コワルスキーはわけもなく口走ると、フゴフゴ鼻を鳴らし、メアリアンの髪や首筋の匂いを嗅ぎまわった。「いい匂いだね、君。すてきな身体だ……」レーザー・ナイフの刃を、今にも切らんばかりに、乳房に近づけたり離したりする。そして、切ない溜息をつきながら、物問いたげに竜神童子を盗み見る。肉を削って良いかどうか、目つきで問うているのだ。
凄絶な官能SFバイオレンス第2弾が「電子版あとがき」を追加収録して、ついに復刊!
●友成純一(ともなり・じゅんいち)
1954年福岡生まれ。1976年、早稲田大学在学中に「透明人間の定理リラダンについて」が幻影城新人評論部門に入選。映画評などでも活躍したのち、1985年「肉の儀式」で小説家デビュー。官能的でバイオレントな作風が注目を浴びる。以後、スプラッター小説のパイオニアとしてだけでなく、SF、ホラー、怪獣小説などでも鬼才ぶりを発揮し、多くの著作を発表。またロンドン関連の著書も多い。現在はバリ島在住。