淡島春夫から父と姉を同時に奪った二月の武蔵不知火市の惨劇の後、しばらく鳴りをひそめていた〈逆宇宙〉からの魔手は、四月に入って富士山麓の小都市・富士守田へと伸ばされた。きっかけは、伊豆の修験道場が何者かに襲われ、修験者全員が惨殺されたうえ国宝級の仏像が破壊された事件だった。怨恨説が主流を占める中で、淡島威明と都道和尚や比良坂だけが真相に気づいていた。数百年間仏像に封じ込まれていた魔教・苦止縷得宗の四大法具の一つ、自然気象を自在に操れる虚空蔵仁寛が奪われたのだということを。犯人は巨勢玄応だった…。
衝撃の怪奇と幻想のアクション巨編、末弥純の表紙・挿し絵を纏い、電子書籍で待望の復刊!
●朝松 健(あさまつ・けん)
1956年札幌生まれ。東洋大学卒。出版社勤務を経て、1986年『魔教の幻影』でデビュー。ホラー、伝奇など、幅広い執筆活動を続けている。2006年『東山殿御庭』が第58回推理作家協会賞短編部門の候補となる。近年は室町時代に材をとった幻想怪奇小説〈室町ゴシック〉、一休宗純を主人公とした〈一休〉、妖怪と人間との心温まる交流をユーモアたっぷりに描いた〈ちゃらぽこ〉ほかの妖怪時代コメディなどを発表。