薬師の硯杖は、犬以上と自負する鋭い嗅覚を武器に、女たちの人に言えぬ悩みを癒してきた。ある日、性具屋の若い女主人から、店秘伝の媚薬を再現してほしいと依頼され、薬草の知識と鋭敏な嗅覚とを駆使して媚薬を作り上げる。夫との不仲に悩む武家妻、生きるために体を売る女郎、男は煩わしいという少女たち…、何人もの女を媚薬と硯杖の魔羅が極楽浄土へと導いていく。
●北山悦史(きたやま・えつし)
1945年、北海道生まれ。山形大学文理学部中退。学習塾運営のかたわら小説を書き、1977年、官能作家デビュー。「官能小説大賞」「日本文芸家クラブ大賞」「報知新聞社賞」を受賞。独特のソフトな文体と描写で人気を博す。気功家としての顔も持ち、各地で気功教室を開いている。『占い師天峰 悦び癒し』(二見文庫)、『絵草子屋勘次随喜竿』(悦の森文庫)、『金四郎桃色秘帖 桜吹雪の女』(学研M文庫)など著書多数。