時の老中松平定信に請われ、臨時与力として火盗改めを助太刀することになった一色又十郎。だが、その情け容赦のない仕打ちは瞬く間に江戸の盗賊たちの間に広まり、いまや又十郎は罪人の首を刎ねる不吉な刀とされる「切柄」と呼ばれて恐れられるようになっていた。
一方、江戸の裏社会では又十郎によって勢力の均衡を失った盗賊集団の間で縄張り争いが勃発。そんな中、間隙をついてのしあがってきたのは狐火の万吉だった。
奇策を用いて火盗改めを翻弄する狐火組とそれとわたりあうお助け組。非道の中にも情けに重きを置く万吉と又十郎の戦い。だが熾烈を極める両者の攻防は、一人の薄幸の女を巡って思わぬ方向へと動き出した。
痛快時代小説、「切柄又十郎」シリーズ第3弾!
●えとう乱星(えとう・らんせい)
1949年熊本県生まれ。慶応大学中退後、同人誌を主催。1989年『中風越後』で小説CLUB新人賞佳作を受賞してデビューする。おもな作品に『黄金無双剣』、『裏小路しぐれ傘』(ともに学研)、『書院番殺法帖』(ミリオン出版)、『かぶき奉行』(ベストセラーズ)など著書多数。