【内容紹介・目次・著者略歴】
オリエント社会経済史の知的巨人が、イスラムの「イクター制」を手掛かりに、霧のごとき概念群の罠から、「封建制」を救い出すべく、硬直化した歴史解釈を打破し新たなる展望を切り開く比較史研究。イスラム・ビザンツ・西ヨーロッパ社会に、〈同一地点への合流現象〉を見出し、大胆なモデル構築を試みる斬新な着想。カーエンの三論文と渡辺金一の「解説」。
【目次】
凡例
《封建制》という言葉の使用についての若干の考察
新刊書〔プートリュッシュ著『領主制と封建制』〕をめぐって
オリエント社会経済史の構想
西ヨーロッパから出発する《封建制》の比較史研究
同一地点への合流現象を示す諸社会を同時に、同等にとりあげる比較史研究
比較に際しての諸指標
土地制度 人的関係 公権力の私的分割 軍人層 要素と全体
社会のタイプに即した、歴史的概念の限定的使用の必要性
比較のシェーマ フィーフ・プロノイア・イクター
商品経済の契機
ムクターの従属性とヴァサルの従属性観念上の差違と事実上の同一性
君主・臣下関係のヒエラルキー的タイプと直属的タイプ
ムクター、ヴァサルの都市居住
同一地点への合流現象を示すイスラム世界と西ヨーロッパ
西洋封建制の「独自性」の意味
封建制論争と関わって
九ー一三世紀におけるイクターの発展 中世の諸社会の比較史のために
テーマ イクターの発展のさまざまな路線
アラブ征服時代 十分の一税(ウシュル)納入義務を負った原初イクター(カティーア)
一〇世紀初頭「税収」イククー(イクター・アルイスティグラール)の出現
托身の普及とイクター保有との相互補強作用
ブワイフ朝軍人体制の確立(一〇世紀第二、四半期)ハラージュ地からの、兵士へのイクター・アルイスティグラールの大幅な分与 イクター・ウィラーヤ(「行政」イクター)の出現 セルジューク朝のイククー・アルイスティグラール
セルジューク朝のイククー・アルイスティグラール朝末期 イクターの封土への接近 イクター・ヒエラルキーの成立
セルジューク朝以外の諸王朝のもとでのイクターの発展
アイユーブ朝エジプト イブラ(評価価値)に基づく「財政」イクター
結語
イスラム世界、西ヨーロッパで等しくみられた二重の歴史的過程(イクターの封建化、国家機能の封建化)
ビザンツ・プロノイアの発展との平行性
ビザンツ、イスラム世界の商品経済的背景 イクター・システムの不安定性と、封建的世襲貴族の未発達
奴隷制商品経済の契機イスラム社会の都市的性格
〔解説〕同一地点への合流現象を示す諸社会の比較史研究(渡辺金一)
訳者あとがき(加藤 博)
カーエン、Cl
1909~1991年。フランスのマルクス主義の東洋学者、歴史家。専門は、十字軍に関するイスラム教徒の情報源、中世イスラム社会の社会史。
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