物語は終わる。けれど、人生は続いていく。
少年時代を過ごし、父母を見送った愛媛県新居浜市の家、劇団「第三舞台」を立ち上げた早稲田大学・大隈講堂裏。
かけがえのない〈場所〉を通して人生の物語を描く、初の自伝小説集!
・「愛媛県新居浜市上原一丁目三番地」
家族の家がなくなる前夜、僕はこの家の物語を書き始めた。
今から五十四年前に始まった、緑の家の物語を。
・「東京都新宿区早稲田鶴巻町大隈講堂裏」
大学二年の四月、大隈講堂の裏広場に通じる鉄扉を押した。
愛媛から出てきた無名の二十歳の若者が、何者かになるために。
・「東京都杉並区××二丁目四番地」
演劇を仕事にして四十年。六十三歳の僕は、
終の住処になるかもしれない家で、次の物語を書き始める。
作家・鴻上尚史の原点とともに、一つの時代を描く傑作小説集。