数え切れないほどの監視カメラが眼を光らせる街角で、高校生の「私」と親友の「彼女」は、携帯端末の小さなレンズをかざして世界を切り取る。かつて「私」の母や、祖母や、曾祖母たちがしてきたのと同じように。そうして切り取られた世界の一部は、あるときには教育や娯楽のために、またあるときには兵器として戦争や弾圧のために用いられた――映画と映像にまつわる壮大な偽史と、時代に翻弄されながらもレンズをのぞき続けた、血縁に依らぬ“一族”の系譜を辿る物語。芥川賞作家の初長編にして、受賞第一作として発表された傑作が待望の文庫化。/解説=倉本さおり