その日、鮫島の葬儀は深い驚きと哀しみの内に静かに執り行われた。けれど鮫島の最後の言葉は芙由子を自責の念へと追いやった。鮫島は芙由子のために死んだのだ。芙由子の理想の病院を創りたいという夢のために。それを叶えようとして彼は…。それは芙由子には重すぎる気持だった。自分はそれほどの事をして貰う価値のある人間だろうか。そして、この先どうしたらいいと言うのだろうか。一番の協力者で有り、いつも支えとなってくれていた鮫島を亡くして、この先…。あの事件の後、万理子は逮捕され裁判を待つ身となった。三宅の父である三宅会長を死に追いやったのは万理子だったのだ。その真相を正すために鮫島は万理子と戦い、そして非業の死を遂げた。だが豪介は万理子を見捨てる訳にはいかないと言う。この人はそういう人だ。野望のために残酷な事をしても、こうなった時に相手を見捨てる事を決してしない。本当は心の奥底に深い人間らしい優しさと責任感を持っている人。あなたがそんな人だから私はきっとあなたを愛したのだと思う。たとえ目的が違い同じ夢を見る事は出来ないと分かっていても。でも…だから…心の中に豪介への悲しみに似た愛が残り、そして自分は独りぼっちだ…芙由子はそう思った…。