「屍体の重量がずしりと腕先にきたとき、はじめて私に任務らしい感情が充実しました」――。国民作家が終生描き続けた「組織・社会と個人との葛藤」をテーマに、これまで単著・全集未収録だった短篇小説を精選。自身の体験を反映した戦争小説から実在の事件をモデルにした小説まで、巨匠のエッセンスを凝縮した全十篇。
【目次】
任務(1955)
危険な広告(1954)
筆記原稿(1957)
鮎返り(1955)
女に憑かれた男(1956)
悲運の落手(1957)
秘壺(1960)
電筆(1961)
特派員(1979)
雑草の実(1976)
解説:権田萬治